現在用いられている血清腫瘍マーカーはいずれも進行癌では陽性率が高いものの、早期癌の検出率は非常に低い。したがって、血中に存在する新しい腫瘍マーカーとなりうるペプチドを見つけることが、癌の早期診断には欠かせない。本研究は独自のペプチド抽出法を用いて、血清・血漿中の新規腫瘍マーカー候補ペプチドを探索し、臨床基礎研究(診断マーカー候補ペプチドの多施設臨床試験、簡単なアッセイ系の構築、既存のマーカーとの比較)をとおして癌の早期診断、治療方針の検討、再発予測を行うための診断薬、診断法を開発することを最終的な目的とする。 昨年度までに健常人15例、食道癌術前患者13例、術後患者11例の血清の解析を行った結果、食道癌患者血清で増加しているピークを20ピーク検出できている。当該年度ではこれらのピークの同定を重点的に行ってきた。しかしながら、同定できたピークは1ピークとなっている。この原因としては、さまざまな翻訳後修飾(細胞内で起こるもの以外を含む)が起こっていると考えられる。 また現在、同定できたマーカー候補ペプチドについては、安定同位体標識ペプチドを作成し、スバイク量の検討も行っている。今後、さらに前処理の最適化を行い、三連四重極型質量分析によるSRM測定(定量)につなげていきたいと考えている。
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