研究課題
平成20年度は共同研究機関である君津中央病院にて、胃癌約120症例(うち早期胃癌約50例、進行胃癌約70例)の手術実施前後の血清を収集した。一方、正常人コントロール検体を柏戸クリニックの人間ドックより収集し、約400例の血清を収集した。これらの検体収集は今後も継続的に行う予定である。ClinProt^<TM>Systemを安定稼動させながらこれらの血清84例ずつ(胃癌手術前後84例、正常コントロール84例の計252検体)をWCX、IMAC-Cu、C8の三種類の磁性ビーズで解析した。その結果、複数のピークが手術前後の比較および胃癌症例と健常人の比較において統計学的に有意差をもって変化することを見出した。このうち3000Daより低分子量のペプチドについては、MALDI-TOF MSのリフレクターモードを使用したMS/MS分析によって同定に成功した。胃癌症例の血清をClinProt^<TM>Systemで解析した報告としてはEbert et al.のもの(J Proteome Res. 2006 ; 5 : 2152-8)があるが、今回同定に成功したペプチドはこの論文で報告されているFibrinopeptide Aとは異なるものであった。従って、新規のペプチドを胃癌マーカー候補として見出したことになる。また、分子量が7000Daから10000Daの領域で見出したピークはこれまでに他の消化器癌の解析において当研究室で同定したものと同じペプチドと推定された。これは多種類の癌に共通する病態(転移・浸潤など)を反映するペプチドと考えられる。以上のように、平成20年度は当初計画どおり、タンパク質/ペプチドの検出と同定を行うことに成功し研究の遂行は順調である。
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Carcinogenesis 29
ページ: 1845-1849