研究課題
平成21年度は、前年度にWCXビーズを用いた検討で高分子キニノーゲンの断片と同定した2種類のペプチド(1945Daと2210Da)について、胃癌腫瘍マーカーとしての診断効率を検討した。既存のCEAとCA19-9と比較したところ、2210DaはCEAおよびCA19-9を、1945DaはCA19-9を上回るAUCを示した。これを早期癌(粘膜下層までの癌)に限定して検討したところ、両ペプチドともにCEAとCA19-9を圧倒するAUCを示し、特に早期癌の検出に有用なマーカー候補であることが確認された。一方、血清のWestern blotを行ったところ、高分子キニノーゲンのバンドが術後検体や正常コントロール検体でより強い発現を示した。血清中のペプチドのレベルと高分子キニノーゲンのレベルの相関を検討したところ、両者は有意に逆相関していた。したがって、胃癌患者の血清中では高分子キニノーゲンが分解され、断片化したペプチドがMALDIで観測されたものと推測された。近年、高分子キニノーゲンのHKaとD5ドメインについて新しい機能が明らかになってきた。HKaとD5ドメインは血管新生抑制作用を持つされ、今回同定したペプチドのアミノ酸配列はD5ドメイン内に存在していた。本研究により、局所の癌やその周辺環境が高分子キニノーゲンやD5ドメインを分解し、血管新生を亢進させているメカニズムの存在が示唆された。今回同定したペプチドおよび高分子キニノーゲンの分解機溝は胃癌の新しい血清バイオマーカーとなるものと考えられる。
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