研究概要 |
緑膿菌Pseudomonas aeruginosaにおいて,抗菌薬耐性は治療を困難にさせるだけでなく病院感染症のアウトブレイクの原因となる頻度を高くする。なかでも,外膜タンパク質であるOprD/OprMの変異はP.aeruginosaにおけるカルバペネム系薬耐性の主要な機序の一つであるが,現在のところ,これを日常診療の臨床検査で検出することは不可能である。そこで,今回,OprD/OprM変異をタンパク質レベルで定量または定性するための測定系を構築し,最終的には,迅速かつ簡便で臨床応用が可能な測定系として完成させることを目的に研究を行うこととした。さちに,構築した検出系を用いて,OprD/OprM変異によるP.aeruginosaのカルバペネム系薬耐性の分布状況を明らかにするための疫学的解析(サーベイランス)をできるだけ規模を大きくして行い,適切な抗菌薬療法を推進するためのエビデンスを得ることも視野に入れた研究を展開する。 平成22年度(最終年度)は,これまでの研究で構築してきた種々の測定系を利用してサーベイランスを開始した。カルバペネム系薬耐性株として臨床分離されたP.aeruginosaの収集を行い,それぞれの株について,イミペネム,メロペネム,ドリペネムの最小発育阻止濃度を決定した。現在,これまで構築した外膜タンパク質迅速抽出系,Western Blot法による検出系,ELISA法による検出系を用いて,OprD変異の検出を進めている。平成22年度内に完了することが困難であるため,平成23年度以降も継続して研究することにしている。
|