研究概要 |
本研究は,様々な極微量成分の高感度かつ特異的計測を可能とするエキシマー蛍光誘導体化法を用いて,有機酸代謝異常症(グルタル酸尿症,メチルマロン酸尿症やCanavan病など)に起因する生体中のポリカルボン酸(アジピン酸,メチルマロン酸やN-アセチルアスパラギン酸など)を効率的に計測することにより,上記疾病の簡便・迅速なマススクリーニング法を構築・システム化することを目的としている。研究二年目となる本年度は,初年度に行った標準物質を用いての予備検討を継続するとともに,複数の健常人試料を対象とした添加検量線を作成し,方法論の問題点を抽出・整理した。 1. 誘導体化反応条件の最適化:前年度に見出した4-(1-pyrene) butylamineを用いて上記ポリカルボン酸のエキシマー蛍光誘導体化分析を実施した。誘導体化反応の触媒として用いたEDCとHOBtの組合せでは一部のカルボン酸が反応しなかったが,他の脱水縮合剤を用いることで全てのカルボン酸に対する反応が良好に進行した。 2. 添加検量線の作成:上記1で変更・設定した最適反応条件において,健常人試料を対象とした添加検量線を作成した。触媒を変更することで,アジピン酸やN-アセチルアスパラギン酸だけでなく,前年度の検討で問題とされていたメチルマロン酸からも良好な検量線が得られた。 3. 前処理法の検討:本法は,生体試料中のタンパク質やアミノ酸だけでなく,クエン酸でも妨害されるため,前処理の導入について検討した。前者はイオン交換・逆相機能を兼ね備えた固相抽出の導入により,後者は金属イオンの添加により,それぞれの妨害を受けることなく,精度良く計測することが出来るようになった。
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