現在の生検組織検査は染色などの生化学的手法によるものが一般的である。この生化学的手法は疾患の診断や病理解析には不可欠の技術であるが、ターゲット不明の疾患には不向きである、得られる情報が限られている、時間や費用がかかるなどの欠点がある。本研究は、近年開発された質量顕微鏡を用いて簡便で多くの情報を得ることができる病態検査方法の確立を目指すことを目的としたものである。質量顕微鏡は微小領域でのメタボローム解析が可能な手法であり、疾患検査方法を確立することは臨床診断への幅広い応用や疾患の発症機構解明への貢献が期待される。平成20年度は脂質蓄積ミオパチー生検筋と人工的に誘導したマウス脂肪肝を疾患モデルとし、組織上の脂質解析方法の検討ならびにMS/MSによる異常代謝物の同定を試みた。上記2疾患の組織上での脂質解析手法の確立をしたのち、脂質蓄積ミオパチーにおいては、疾患筋組織で特徴的に増減している物質と異常代謝物質の局在を明らかにした。また、質量顕微鏡解析によって得られたデータに多変量解析を適用することにより、脂肪肝において変動する代謝物を見出した。多変量解析によって見出した代謝物は、組織上でのMS/MSによって同定することに成功した。 平成20年度は、American Society for Mass Spectrometry、Journal of Oleo Scienceにて研究成果を報告し、組織解析手法に関する論文を1報投稿中である。
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