研究の目的 近年、DNA異常メチル化に代表される、エピジェネティックな遺伝子異常と疾病発症との関連が注目を集めているが、その発展は特に癌研究の分野において顕著であり、発癌メカニズムの一端を担うものとして発見が相次いでいる。DNA異常メチル化は葉酸代謝と関係が深く、飲酒や栄養摂取など、生活習慣との関連においてもその重要性が認識されつつある。本研究は、文部科学省科学研究費による大規模コホート研究の保存血清を利用し、発癌および生活習慣と血清DNA異常メチル化の関係を明らかにすることを目的としている。 <平成21年度の研究実績> これまでに、上記コホート研究の一部となる旧穂別町コホート206人の検体において、全ゲノムの約17%を占める反復配列であるLINE1に関するメチル化解析を終えており、昨年度はLINE1低メチル化(発癌や癌の悪性度との関連が明らかとなっている)と生活習慣の関連の有無について解析を進めてきた。食習慣などを中心に解析を進めたものの、現在のところ血清DNAのLINE1メチル化状態に目立って影響を与える生活習慣の存在は見出されていない。このことが、実際に生活習慣がDNAメチル化に与える影響が小さいことを意味しているかどうかについては今後の検討が重要である。いずれの結果が得られた場合にも、DNAメチル化あるいはエピジェネティクスという観点からの予防医学に対するアプローチとして本研究は重要な役割を担うと考えている。今後はこうした結果の解釈や、他の遺伝子での影響を調べていく。なお、発展的な研究として、MCA(Methylated CpG island Amplification)法やCpGアイランドマイクロアレイ(Agilent社)を行うことで、ゲノムワイドな異常メチル化や網羅的な遺伝子メチル化解析を行っていくことも可能と考えている。
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