研究概要 |
本研究では、エイズ発生動向調査へのHIV感染者報告数とAIDS患者報告数について、1999年4月の感染症法施行以降である2000~2007年の推移傾向に基づいて、5年先の2012年までの近未来予測を地域ブロック別にはじめて試みた。平成19年エイズ発生動向年報から2000~2007年の地域ブロック別、日本国籍のHIV感染者報告数およびAIDS患者報告数を用いた。全国および地域ブロック別の直線回帰式を得て、寄与率を確認し、2012年のHIV感染者・AIDS患者報告数を推計した。回帰式の寄与率は、全国ではHIVが0.96、AIDSが0.87といずれも高かった。報告数のごく少ない北陸を除く地域ブロック別の寄与率は、HIVでは0.82~0.98、AIDSでは関東・甲信越と東京が0.4前後、それ以外では0.70~0.96であった。回帰式による2012年の予測値は、全国のHIV感染者報告数が1,312人、AIDS患者報告数が444人であり、地域ブロックごとの予測値の合計とそれぞれ一致した。地域ブロック別の予測値は、HIV感染者報告数が10~482人で、すべての地域ブロックで増加していた。AIDS報告数予測値は8~96人であり、関東・甲信越で減少、東京でほぼ横ばい、それ以外で増加していた。これらのことから、HIV感染者報告数は全国も地域ブロック別にも直線的な増加であり、今後5年間も同じ傾向とすると5年後の報告数は2007年の約1.4倍と試算された。AIDS患者報告数も全国としては直線的増加であったが、地域ブロック別では傾向が異なっていたことから、今後さらに観察が必要と考えられた。HIV/AIDSは世界的に大きな問題であり、わが国においてもHIV感染予防や、感染者・患者への医療体制の整備がますます重要となっている。本研究の結果はその計画立案の基礎として参考となるものである。
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