研究概要 |
トコトリエノールの抗腫瘍作用の機序としては、抗酸化作用、アポトーシス促進作用、細胞周期調節作用、血管新生抑制作用などが挙げられている。一方、ヒト血清中のトコトリエノール濃度は非常に低く、0.3μM程度であると報告されているため経口摂取による抗腫瘍効果を期待するにはさらなる作用機序の解明が必要である。大腸がんでは、COX-2が高度に発現しているが、大腸腺腫の時期にすでに間質細胞ではCox-2が発現している。間質由来のCOX-2が大腸上皮のがん化を促進していると考えられている。トコトリエノールが大腸がん細胞に直接及ぼす影響(アポトーシス誘導作用等)だけでなく、間質細胞由来のCOX-2、NOに及ぼす間接的な抗腫瘍効果についても評価を行った。トコトリエノールを投与し、MTTアッセイで腫瘍増殖抑制機能評価、フローサイトメトリーでアポトーシス誘導作用、ウェスタンブロッティングでCOX-2、eEF1A等の腫瘍関連タンパクの発現評価、ELISAでプロスタグランジンE2濃度測定、グリス試薬にて亜硝酸濃度測定を行った。ヒト大腸がん細胞HT-29細胞ではδ-トコトリエノールが最も強い腫瘍増殖抑制効果を示し、5μM以上で有意差が見られた。メカニズムの一つとしてCaspase-9,3,7を介したアポトーシス誘導作用が考えられ、Caspase inhibitorの投与により、トコトリエノールの腫瘍増殖抑制効果はキャンセルされた。マウスの細胞では、大腸がん細胞colon 26、線維芽細胞MEFsの両方で、トコトリエノールによるプロスタグランジンE2濃度低下作用が見られた。また、MEFs細胞では、トコトリエノールによるNO産生抑制効果も同時に見られた。これらのトコトリエノールの作用が複合し、腫瘍の進行・増殖・転移等を抑制している可能性が示唆された。
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