ある種の環境化学物質(大気汚染物質や可塑剤、添加物等)は、アレルギー疾患の発症・増悪を誘導する可能性が示唆されているが、その詳細なメカニズムは明らかでない。本研究では、免疫応答に中心的な役割を果たしている樹状細胞(DC)の分化・成熟・活性化の変動から、環境化学物質によるアレルギー増悪メカニズムの解明をめざしている。平成20年度は、大気汚染物質であるディーゼル排気微粒子(DEP)およびその脂溶性化学物質成分と残渣粒子成分、可塑剤であるフタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)やフタル酸ジイソノニル(DINP)を対象とし、これらの環境化学物質が、マウス骨髄細胞より分化誘導した樹状細胞の活性化に及ぼす影響について検討した。 その結果、DEPおよびその脂溶性化学物質成分は、抗原の捕食と細胞内濃縮に関与するCD206や抗原のプロセシングと提示に関与するCD208、活性化マーカーであり補助刺激分子のCD83、CD86、リンパ節への遊走に関与するケモカインレセプターのCCR7、CXCR4といった分子の発現を増加させることが明らかとなった。一方、これらの分子の発現に対する残渣粒子の影響は観察されなかった。これより、DEP中の脂溶性化学物質が樹状細胞のリンパ節への遊走と抗原提示を促進する可能性が示唆された。DEHPとDINPもまた、樹状細胞のCD206およびCD83、CD86、CCR7、CXCR4の分子の発現を増加させることが明らかとなったことから、リンパ節への遊走と抗原提示を促進する可能性が示唆された。
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