研究概要 |
ある種の環境化学物質(大気汚染物質や可塑剤、添加物等)は、アレルギー疾患の発症・増悪を誘導する可能性が示唆されているが、その詳細なメカニズムは明らかでない。本研究では、免疫応答に中心的な役割を果たしている樹状細胞の分化・成熟・活性化の変動から、環境化学物質によるアレルギー増悪のメカニズムを明らかにすることを目的とした。 これまでの成果より、可塑剤であるフタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)やフタル酸ジイソノニル(DINP)、ディーゼル排気微粒子中の脂溶性化学物質(DEP-OC)とその含有成分であるベンゾ[a]ピレン(BaP)は、マウス骨髄由来樹状細胞(BMDC)の抗原提示に関わる細胞表面分子やリンパ節への遊走に関わるケモカインレセプターの発現等の活性化マーカーを増加させることを明らかにした。平成21年度は、これらの環境化学物質がBMDCの機能に及ぼす影響について検討した。その結果、BMDCのダニ抗原特異的な抗原提示機能は、DEHPおよびDINPの曝露により増強したが、DEP-OCとBaPの曝露では明確な変化は認められなかった。一方で、リンパ節で発現しているケモカインに対するBMDCの遊走活性は,いずれの環境化学物質の曝露でも増加する傾向がみられ、関連分子の発現増加に対応することも明らかにした。 環境化学物質によるアレルギー疾患増悪の一要因には、樹状細胞の活性化と所属リンパ節への遊走、それに続く抗原提示機能の亢進が寄与している可能性が示唆された。
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