ある種の環境化学物質(大気汚染物質や可塑剤等)は、アレルギー疾患の発症・増悪を誘導する可能性が示唆されているが、その詳細なメカニズムは明らかでない。本研究では、アレルギー増悪のメカニズムを明らかにすることを目的とし、環境化学物質が、免疫応答に中心的な役割を果たしている樹状細胞に及ぼす影響について検討した。本研究成果より、ディーゼル排気微粒子(DEP)中の脂溶性化学物質(DEP-OC)とその含有成分の1つであるベンゾ[a]ピレン(BaP)、可塑剤であるフタル酸ジエチルへキシル(DEHP)やフタル酸ジイソノニル(DINP)は、アトピー素因を有するマウス骨髄由来樹状細胞(BMDC)の抗原提示に関わる細胞表面分子やリンパ節への遊走に関わるケモカインレセプターの発現等の活性化マーカーを増加させることを明らかにした。また、当該環境化学物質は、リンパ節で発現しているケモカインに対するBMDCの遊走活性も増加させる傾向がみられ、その増加は関連分子の発現増加に対応することも明らかにした。さらに、DEHPおよびDINPは、BMDCのダニ抗原特異的な抗原提示機能とTh2サイトカインの産生誘導を亢進することも明らかにした。本研究で対象とした環境化学物質はそれぞれ特異性が存在するものの、いずれもBMDCの活性化と所属リンパ節への遊走、それに続く抗原提示機能のいずれかあるいは全てを亢進することが明らかとなった。環境化学物質によるアレルギー疾患増悪の一要因には、BMDCの活性化とそれによるTh2反応の亢進が寄与している可能性が示唆された。
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