1) 血液型抗原の発現は、小腸においては陰窩において弱く、絨毛先端においては強くといわれているが、詳細は明らかでない。一方、ノロウイルス(NoV)は下痢症発症の際、腸絨毛に強くダメージを与えることが知られているが、そのメカニズムは明らかになっていない。NoVの組織特異性に血液型抗原が関与するかどうかの検討を行うため、平成20年度はヒト小腸切片を用いた免疫組織化学染色を行い、Lewis抗原の発現分布を解析した。さらに平成21年度には切片上でのVirus-like particles (VLPs)のBinding assayを試みた。平成22年度も引き続きBinding assayによるデータ取りを行い、Lewis抗原の発現との相関性を検討する予定である。 2) 血液型抗原は末端の構造によってABO型、Lewis型に区別され、さらに内部のlinkageによってタイプ1、2に区別される。腸管上皮には主にタイプ1抗原が、赤血球上には主にタイプ2抗原が発現しているとされる。申請者は、平成20年度までに、VLPsを用いたIn vitro-binding assay (ELISA、Biacore)によってNoVがABO抗原だけでなくLewis抗原においてもタイプ1、2構造の識別を行っていることを明らかにした。平成21年度は糖鎖遺伝子改変細胞を用いた解析により、細胞上の血液型抗原においてもタイプ1、2構造の識別が行われていることを確認した。NoVは血液型抗原のタイプ1、2構造を識別することによって自らの組織特異性を決定している可能性がある。
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