本研究では、t(14;18)をなど頻度の高い染色体異常によって悪性リンパ腫を層別化し、遺伝子多型と飲酒・喫煙習慣、動物性脂質を中心とした食生活習慣、職業などの環境要因との相互作用の検討を行う。これにより、悪性リンパ腫の染色体異常ごとの発症リスク因子を明らかにし、今後の予防や治療の実現に資することを目的とする。本年度はベースラインのデータとして、飲酒習慣・喫煙習慣と悪性リンパ腫のリスクについて症例対症研究で検討した。症例は組織学的に悪性リンパ腫と診断された782例、対症は当センターを受診した非がん患者で、症例に対して年齢、性を1:5でマッチさせた3910例とした。関連の指標としてロジスティック回帰分析によるオッズ比(OR)と95%信頼区間(95%CI)を用いた。 結果、飲酒量と悪性リンパ腫の発症に有意な負の相関を認め、非飲酒者に対して一日の飲酒量がアルコールに換算して50g以上のグループではOR=0.42(95%CI:0.16-1.12)(trend P<0.001)であった。また、喫煙習慣(喫煙開始年齢・喫煙本数(パックイヤー))と悪性リンパ腫の発症では有意な正の相関を認め、0-4パックイヤーのグループに対して、5-19パックイヤーのグループではOR=1.32(95%CI:1.02-1.71)、20-39パックイヤーのグループではOR=1.39(95%CI:1.07-1.80)、>=40パックイヤーのグループではOR=1.48(95%CI:1.12-1.95)(trend P=0.002)であった。 この結果は、欧米からの報告と同様の傾向を示していた。また、この結果は比較的小規模な報告しかないアジア人のデータとして予防対策に意義高いものであると考えられた。今後さらに染色対異常による層別化解析を中心とした詳細な検討が必要である。
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