本研究は頭頸部がん(口腔がん、咽頭がん、喉頭がん)の発症にヒトパピローマウイルス(HPV)が及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。タバコやアルコールの摂取は頭頸部がんの発症と強い関連を示す危険要因であるが、タバコとアルコールを両方摂取しない集団(非喫煙・非飲酒者)おいても、比較的高い頻度で頭頸部がんの発症を認めることを我々の先行研究で認めた。近年、HPV感染と頭頸部がんのリスクに関するいくつか報告があるが、非喫煙・非飲酒者の集団の頭頸部がん発症においては、HPV感染が影響を及ぼしていることが疑われる。しかしながら、本邦においてHPV感染と頭頸部がんの発症を大規模に検証された報告はない。また、HPV感染と喫煙・飲酒習慣がどのような効果(相乗的・相加的)で頭頸部がんの発症に影響をおよぼすかに関しても不明である。 本年度はHPV感染と頭頸部がんの発症リスクを検討するために、愛知県がんセンター病院疫学研究の頭頸部がん患者と非がん対照者の血液サンプル採取、生活習慣調査票の聴取を続け、現在も進行中である。また、HPV感染の診断方法に関して検討した。我々はHPV感染の診断は血清抗体の測定によって行うが、血清抗体の測定方法は確定していない。HPV抗体測定のためのELASA法を確立するため、海外を含めたいろいろな方法を考慮し検討した。今後、測定方法が決定ししだい、解析を進めていきたいと考えている。
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