本研究は頭頸部がん(口腔がん、咽頭がん、喉頭がん)の発症にヒトパピローマウイルス(HPV)が及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。タバコやアルコールの摂取は頭頸部がんの発症と強い関連を示す危険要因であるが、タバコやアルコールを両方摂取しない集団(非喫煙者・非飲酒者)においても頭頸部がんの発症を認めることがある。HPV感染は頭頸部がんの発症に影響を及ぼすことが近年証明されてきたが、非喫煙者・非飲酒者における頭頸部がんの発症にHPV感染が関与していることが推測される。 本研究において、頭頸部がん385例のなかで、非喫煙者・非飲酒者は49例(13%)であった。部位別では口腔がん38例、咽頭がん8例、喉頭がん3例であった。咽頭がんのなかで、舌がんが23例であり、そのうち22例が女性であった。 次に非喫煙者・非飲酒者の集団を中心にHPV感染の測定方法を検討した。我々は血清のHPV抗体価を測定することによってHPV感染の有無を診断しようと試みたが、HPV抗体価測定の確立した方法はなく、ELISA法を中心にHPV抗体価の測定方法を模索している。今後、HPV抗体価の測定方法が確立したら、随時研究成果を報告していく予定である。
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