研究課題
自由主義、保守主義、社会民主主義という異なる福祉国家体制をもつ英国、日本、フィンランドにおける公務員を対象として、社会経済的要因の健康影響を評価した。その結果、フィンランドにおいて職域における心理社会的ストレスおよび身体的精神的健康度の職階差は小さく、社会民主主義的な平等政策が格差を小さくする可能性が示唆された。こうした社会民主主義的な政策は性差をも縮小させる可能性がある。そこで3力国の職域における心理社会的ストレスの要素(仕事の裁量度と要求度)や労働時間、精神的身体的健康度の性差について評価した。その結果、フィンランドの女性はむしろ男性より心理社会的ストレスの要素が少なかった。逆に、日本は、女性は男性より心理社会的ストレスの要素が多く、また、長時間勤務者も多かった。精神的身体的健康度の性差は、3力国とも女性のほうが男性より精神的身体的健康度が低かったが、この健康度の性差は日本や英国で大きく、フィンランドで小さい傾向にあった。こうした健康度の性差は、心理社会的ストレスや労働時間の性差を調整したところ、3カ国とも性差が縮小する傾向にあったが、日本において最も性差が縮小した。労働者集団における精神的身体的健康度の性差は、心理社会的ストレスの性差によってある程度説明できることを示している。したがって福祉国家体制は、社会経済的要因による健康格差だけではなく、性差を含めた健康格差にも影響を与えている可能性が示唆された。また、日本の集団の分析では、女性のワーク・ライフ・バランスは男性より悪く、このことが日本の女性における精神的健康度の低下につながっている可能性が示唆された。ワーク・ライフ・バランスは3カ国の中ではフィンランドの女性が高かった。以上から、政策は、心理社会的ストレスやワーク・ライフ・バランスなどを介して、その国の労働者の健康格差に影響を与えている可能性が示唆された。
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