研究課題
本研究課題は、日本、英国、フィンランドという異なる福祉国家レジームにおける社会経済的要因による健康格差及びその背景の類似点や相違点について検討することで、健康政策に資することを目的としている。当該年度は、社会経済的要因による睡眠格差の国際比較を行い、3か国とも職階が低いほど睡眠の質が低いことが明らかとなった。睡眠の質が低いと心臓血管疾患等の発生率が高まることが知られており、睡眠格差の縮小が求められる。また、睡眠格差の背景として、日本では特に心理社会的ストレスやワーク・ライフ・バランスの寄与が大きいことが示唆された。また、QOL質問票を用いた健康格差の縦断的分析も行った。その結果、日本は、英国やフィンランドと比較して社会経済的要因による健康格差の拡大が幾分小さかった。福祉国家レジームによる格差への影響は、経済的格差だけでなく社会的格差としての性差についても影響が出ることから、心理社会的要因や労働時間の性差や健康度の性差に関する国際比較を行った。その結果、日本は、年齢や社会経済的地位を調整後の心理社会的ストレスや勤務時間の性差が3か国の中で最も大きく、フィンランドにおいて最も小さかった。健康度の性差についても3か国の中で最も大きかったが、心理社会的ストレスや勤務時間を調整後に健康格差が最も縮小した。日本は女性に負担がかかりやすい保守的福祉国家に分類されるが、今回の研究からストレスや健康指標でもそのことが裏付けられた。また、共同研究者会議を実施して、今後の方向性を討議するとともに世界睡眠学会2011シンポジウムにて共同研究の成果について公表した。最終年度のため、本研究課題の既発表論文に基づくレビュー論文を出版した。
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Social Science and Medicine
巻: 73(4)(原著論文) ページ: 595-603
日本予防医学会雑誌
巻: 6(招待総説) ページ: 69-80