平成20年度は、まずこれまでの既存の健診データから腹部肥満の種々の生活習慣病に対する危険性の評価を行った。対象を腹部肥満(男性腹囲≧85cm、女性腹囲≧90cm)の有無で2群に分けて追跡を行うと、腹部肥満群においては将来的な糖尿病の罹患に関しては約2.5倍、高血圧の罹患に関しては約2倍のリスクがあることが確認された。また腹部肥満で危険因子の集積しているメタボリックシンドロームに該当する者においては、全身の血管内皮機能障害を反映すると考えられる尿中微量アルブミン量が高値を示し、内臓脂肪の蓄積および腹部肥満が内皮機能障害を引き起こし、さらに動脈硬化を進展されることにより、心血管疾患イベントを増加させている可能性が示された。よって腹部肥満結果として心血管疾患イベントを増加している可能性が示され、ライフスタイルへの介入は重要であることが示唆された。また対象を腹部肥満の有無で2群に分け、さらに高感度CRP(hsCRP)の中央値で高hsCRP群、低hsCRP群の2群に分け、非腹部肥満で低hsCRPの正常群、腹部肥満単独群、高hsCRP単独群、腹部肥満+高hsCRP群の4群に分けて追跡を行うと、腹部肥満+高hsCRP群のみにおいては将来的な高血圧の罹患の有意なリスクとなることが示され、そのハザード比は1.5であった。よって腹部肥満に該当する者の中でも潜在性の動脈硬化のマーカーである高感度CRPを組み合わせることにより、種々の生活習慣病罹患のハイリスク者を同定できる可能性も示された。平成20年度の健診受診者638名におい高CRPや尿中微量アルブミンおよびアディポサイトカインの測定を行っておより、これらの結果を踏まえてさらなる解析を進めていく予定である。
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