研究概要 |
本研究は、地域在住高齢者における初期の機能低下(「高次生活機能低下」)を予防することが将来のADL(日常生活動作)の低下を予防することから、「地域在住高齢者における日本独自の食事・栄養摂取および食事パターンが8年後の高次生活機能低下に及ぼす影響」について明らかにすることを目的として検討を行った。 対象は、1986年より岩手県花巻市(旧大迫町)において実施されている大規模コホート「大迫研究」のうちベースライン時60歳以上で著しい機能低下、高次生活機能低下を示していない地域在住高齢者である。本研究の検討には、141項目からなる詳細な食事調査データを用い、"1.栄養・食品摂取と高次生活機能低下との関連""2.食事パターンと高次生活機能低下との関連"を明らかにした。 1. 栄養・食品摂取と高次生活機能低下との関連 まず個々の栄養素・食品と8年後の高次生活機能低下との関連をみたところ、タンパク質、魚類由来のn-3系脂肪酸、ビタミンB2、キノコ類、海草類の摂取が、高次生活機能低下と関連していることが明らかとなった。 2. 食事パターンと高次生活機能低下との関連 次に食品摂取に対する文化的背景や特性を考慮に入れた食事の相加・相乗効果や相互の役割を含めた検討を目的として、食事パターンでの検討を行った。その結果、3つの食事パターンが明らかとなった;バランス食、乳製品食、少食。その結果、少食群において、有意に8年後の高次生活機能低下と関連しており、その関連は、種々の交絡因子を調整した後も強固であった。 本研究の結果は、海外の学会で講演した。また、残念ながら妊娠により講演は断念せざるを得なかったものの、ウィーンで行われたヨーロッパ臨床栄養学会では、研究内容が優れている者に贈られる賞をいただいた。なお、上記1,2のそれぞれについては論文作成をほぼ終え、現在投稿に向けての最終段階に入っている。 本研究は今まで殆ど報告がない、初期の生活機能低下と食事との関連を見たものであり、今後は下位尺度「手段的自立」「知的能動性」「社会的役割」での検討、それぞれの食事パターンにおける特徴についてより詳細な分析を継続、報告していく。
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