研究概要 |
テネイシンC(TN-C)が法医学分野で応用できる「新規心筋細胞傷害マーカー」となり得るか否かを明らかにすることを目的とする。今年度は死体血清中TN-C濃度の測定及び炎症マーカーの1つでもあるC反応性蛋白(CRP)濃度について測定して、その関係性や各因子について統計的解析を行った。 1、ELISAによる血清中TN-C濃度およびCRP濃度の測定 死後経過時間48時間以内の法医解剖症例101例(男性64名/女性37名、年齢0.1~93歳、内因死54例/外因死47例)の心臓血血清中のTN-C濃度をELISA法で測定し、また合わせて同症例のCRP濃度についても測定を行った。それらの測定値と死因、死後経過時間、受傷(発症)から死亡までの時間などとの関連について検討した。 これまでに死体血におけるTN-C濃度測定や検討を行った報告は無く、健常人血清中のTN-C濃度は23.4~74.8ng/mlと報告されている。今回測定した101例の血清中TN-C濃度は心臓血で24~1,000<ng/ml(281.9土278.5ng/ml)であり、何れも健常人血清中より高値を示す症例が多かった。 また、死体血でも比較的安定であると報告されているCRP濃度も合わせて測定したが、CRP濃度とTN-C濃度間に有意な相関関係はなく、血清中TN-C濃度に大きな影響を与えると考えられる死因および受傷(発症)から死亡までの時間については特徴的な傾向を見いだすことができなかったが、縊死および溺水などの死亡までの時間が短時間の症例では他の症例に比べて低値を示した。但し、何れの症例も健常人血清中よりもほぼ高値であり、何らかの死後変化の影響が考えられ、死体血においてはTN-C測定値そのものでは心筋傷害の指標として用いられないことが明らかになった。 今後もTN-C濃度の応用や心筋からのTN-CのmRNA検出など更なる検討が必要である。
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