研究概要 |
本研究は剖検中迅速に溺水吸引の予試験が行える検査法の確立を目標に, 海水及び淡水中の水棲細菌を指標とした新しい血清学的検査法の確立を試みるものである. そこで抗原として最適な細菌種を決定するため, これまで解剖を行った全ての溺死例および水辺付近で発見された非溺死例についてその優勢種を決定し検討した. 調査した事例は溺死28例(海水域12例, 汽水域4例, 淡水域8例, 浴槽内4例), 及び水辺で発見された非溺死10例であり, 海水溺死例からはVibrio spp., Photobacterium spp., Listonella spp., Shewanella spp., Psychrobacter sp. などの海洋細菌, 淡水溺死例からはAeromonas spp. の淡水性の細菌, 浴槽内の水で溺死した事例からは, Staphylococcus, Enterobacter sp., Escherichia sp. Enterococcus sp., Pantoea sp., Salmonella sp., Bacillus sp. などの腸内細菌及びグラム陽性菌, 非溺死例からはPseudomonas spp., Staphylococcus spp., Lactococcus sp., Escherichia sp. Enterobacter spp. Citorobacter sp. Serratia sp. Moellerella sp. などの腸内細菌, グラム陰性菌, 及びグラム陽性菌が検出された。これらの結果に基づいて, まず海水の指標としてはVibrio属及びPhotobacterium属を, 淡水の指標としてはAeromonas属の細菌について免疫用の抗原を調製した. また交差反応性を見るたために非溺死例から得られた腸内細菌科の細菌群及びグラム陽性菌群についても菌体の調製を行った.
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