研究概要 |
[目的]形態所見が乏しい敗血症性、アナフィラキシー、神経原性ショックの剖検診断には困難が伴うことがしばしば経験される。ショックが法医鑑定と密接な関係にあること、また診療関連死の鑑定の増加をも念頭に置くと、剖検診断に適した新たなショックバイオマーカーの検索は急務と考えられる。本研究では特にアナフィラキシーショックについて、動物実験モデルを用いて血管におけるトランスクリプトーム解析を行い、診断に有用と考えられる候補遺伝子を検出した。 [方法]ラットアナフィラキシーショックモデルにはalbumin感作モデルを採用した。健常ラットおよびアナフィラキシーショックラットより胸部大動脈、大腿動脈、上大静脈を採取し、さらに胸部大動脈につきSuperSAGE法を用いた遺伝子発現動態の網羅的解析を行った。有意差を認める遺伝子に関してはreal-time quantitative PCR法により再現性の確認を行い、再現性の認められた遺伝子については大腿動脈、上大静脈での発現動態を追跡した。 [結果および考察]胸部大動脈につきSuperSAGE法を用いた遺伝子発現動態の網羅的解析を行ったところ、健常ラットでは87144タグ、アナフィラキシーショックラットでは63436タグのシークエンス結果が得られた。健常ラットとアナフィラキシーショックラットの間で有意差を認めたタグのうち、健常ラットで発現量が多かった上位3個は、elastin、secreted protein, acidic, cysteine-rich、collagen,type III,alpha 1、アナフィラキシーショックラットで発現量が多かった上位3個はtransgelin、elastin、secreted protein, acidic, cysteine-richであった。本検討によりアナフィラキシーショックでは胸部大動脈で遺伝子レベルでの変動がある可能性が示唆された.
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