この研究は、実際のヒト覚醒剤中毒をモデル化した動物による脳神経の細胞ストレスを解析しようとするものである。しかし、この動物モデルは確立されていないため、モデル動物を作成することが必要である。そこで、一般的に動物実験にてよく用いられているMethamphetamine(METH)の投与量である40mg/kgを最大投与量として、40mg/kgと10mg/kgを投与した高容量投与動物、5mg/kg、1mg/kgのMETHを投与した低容量投与動物および溶媒のみ投与のコントロール動物を作製し、抗BCL2抗体、抗Bax抗体、抗GADD153抗体、抗KDEL抗体を用いた免疫組織化学的染色(IHC)による検討を脳組織のパラフィン切片に対して行った。さらに、TUNEL法を用いたアポトーシス細胞の検出を行った。 ミトコンドリアに関連した指標である抗BCL2抗体、抗Bax抗体によるIHCでは、明らかな変化は認めなかった。TUNEL陽性細胞についても明らかな変化は認めなかった。 小胞体ストレスに関連した指標である抗GADD153抗体、抗KD肌抗体によるIHCでは、抗GADDl53抗体のIHCでは陽性像が観察されず、蛍光抗体法を用いた検討が必要であると考えられた。それに対し、抗KDEL抗体陽性細胞が高容量投与動物より一低容量投与動物の脳組織において、強発現していることが観察され、METH少量投与が小胞体ストレスを惹起することが明らかとなった。
|