研究概要 |
Methamphetamine(METH)低用量反復投与動物における脳内細胞ストレス状態を免疫化学的に解析することにより、METH中毒における脳内の細胞ストレス状態を解明し、ヒトのMETH中毒例における法医病理学的診断に有用な情報を得ることが可能となる動物モデルの作成、およびこのモデル動物の解析を目的とした。本研究では、METHを(0.5mg/kg/day, 1mg/kg/day, 5mg/kg/day, 10mg/kg/day)、雄性ラットに5日間慢性投与を行い、この動物の脳よりタンパク質を抽出して、小胞体ストレス時に増加するシャペロンタンパクであるglucose-regulated protein 78(GRP78)、酸化ストレス時に増加するCu/Zn superoxide dismutase 1(SOD1)、さらに、ドーパミン神経障害の指標であるTyrosine hydroxylase(TH)をWestern blottingにて解析した。その結果、1mg/kg群ではGRP78の有意な上昇を認め、THに変化を認めずSOD1の有意な上昇も認めなかった。5mg/kg群および、10mg/kg群においては、SOD1の有意な上昇を認め、GRP78の増加を認めなかった。さらに、1mg/kg群においての免疫組織化学的解析では、GRP78が中脳黒質の神経細胞に発現の増強が観察された。 以上の結果より、1mg/kgのMETHを5日間慢性投与することにより、黒質の神経細胞に小胞体ストレスが増加するモデル動物を作成することが出来たと考える。現在、このモデル動物についての詳細な解析を進めている。
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