研究概要 |
乱用薬物の強化作用にとって重要な神経回路となっている黒質-線条体系DA神経系を中心に、メタンフェタミン(MAP)およびエタノールによって引き起こされるドパミン(DA)神経細胞の変化と、それに関与すると考えられるアルコール嗜好性の遺伝的相違について検討した。今年度はアルコール嗜好性の異なる2系統ラットに対して、(1)脳内微小透析法(brain-microdialysis)を用いた動物実験で、MAP投与による線状体ドパミンおよびセロトニンの動態変化(2)MAP投与前の基底状態で線状体内のDopamine Transporter(DAT)のm-RNA発現量の系統差(3)MAP投与後(10mg/kg,i.p.投与から24時間後)の線状体内DATのm-RNA発現量の系統差とその増減等を検討した。 その結果、「アルコール嗜好性といわれる遺伝的な相違には、線条体のドパミン(特にD1)神経系が関与している可能性が高く、DATの関与も否定できない」という結果を得た。これらの結果をもとに、今後は乱用薬物の強化作用にとって重要な神経回路となっている黒質-線条体系のD1受容体およびドパミンのnegative-feedback機構であるDA transporter(DAT)や自己受容体(シナプス前D2受容体)に焦点を絞り、その遺伝子発現率等、分子レベルでのアプローチをメインに覚せい剤精神病のメカニズムと、その形成へのアルコール嗜好性の関与について明らかにしたいと考えている。
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