ストレス負荷による脳腸相関の評価 (1)過敏性腸症候群の患者および健常者に対して、より臨床の現場に準じた新たなストレス負荷試験(情動ストループ負荷、ウィスコンシンカードソーティング、鏡面描写など)を施行する。 (2)その時の脳機能を、最新の脳画像技術であるfunctional MRIにて評価するとともに、大腸運動機能評価(大腸バロスタット検査)も同時に行うことで、脳腸相関(Brain-Gut interaction)を解明する。大腸を刺激することによる脳機能画像の変化(末梢から中枢への情報伝達)だけではなく、ストレス負荷による脳機能と大腸機能の変化(中枢から末梢)を検討することで、脳腸相関をより科学的に明らかな病態として解明する。 (3)ストレスホルモンであるコルチコトロピン放出ホルモン(Corticotropin releasing Hormone:CRH)と、そのアンタゴニストであるα-helical-CRHを静注し、その反応を脳機能と、大腸運動の両面から検討する。αhelicalCRHを静注したときの脳機能画像は未だなされたことがなく、その効果を明らかにして、消化管運動機能の改善と、脳科学に基づいたQOLの向上を目指す新たな治療法の開発のはじまりとするものである。 近年、拡散テンソル画像というMR画像処理の発展により、神経細胞束を画像として捉えることが可能となってきている。PTSDやうつ病での拡散テンソル画像で、帯状回の異常が指摘されている。 (4)過敏性腸症候群の患者での拡散テンソル画像による脳機能の評価は未だなされていない。過敏性腸症候群患者で、脳機能と共に、脳に器質的変化が生じているかどうかを検討する。脳機能の器質的異常が認められれば、神経細胞が再生する事が証明されてきている昨今の研究成果から、新たな薬物療法を開発する出発点となりうる。新たな治療効果の判定方法ともなり、治療法の選択に大きく貢献できる。 (5)過敏性腸症候群の重症度による相違の検討も非常に重要であるため、各種心理検査と共に、日本人で正当性を立証されたIBS-QOLによる評価も試みる
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