研究概要 |
がん患者の身体面の障害は,心理社会的な障害の要因となり,QOLを阻害し,病気に関連する患者の負担を大きくすることが報告されている.そのため,身体機能の向上を図ることは第一のリハビリテーション目標と考えられ,適切な評価尺度を使用し、適切な効果判定を行うことが,その過程に不可欠である. Physical Performances Tests Battery日本語版(以下PPT Battery日本語版とする)によるがん患者の動作遂行度測定の実施可能性を検討し,痛みを有するがん患者の活動制限の特徴とその関連要因を検討することを目的に調査を行った. 組織学的に末期がんと診断され,外来もしくは入院中の患者120名を対象とした.評価尺度として,痛みに影響される8つの日常生活基本動作の遂行度にPPT Battery日本語版,活動制限の重症度にFunctional Independence Measure(以下FIMとする),痛みにVisual Analog scale,倦怠感にBrief Fatigue Inventoryを用いた.本研究は,調査実施施設の研究倫理審査委員会の承認を受け,すべての対象者に文書で説明し,文書で同意を得た. PPT Battery日本語版の信頼性に関して,評価者間信頼性,評価者内信頼性共に高いICC値を示した.妥当性に関して,PPT Battery日本語版の各項目得点とFIMの合計得点との間に有意な関連が認められた.関連要因に関して,単変量解析または重回帰分析の結果,PPT Battery日本語版の各項目に痛みと感情状態が有意に関連し,また,その他の要因として歩行状態が有意に関連していた. 今回使用したPPT Battery日本語版は,痛みを有するがん患者の日常生活動作遂行度を測定する評価尺度として十分な信頼性と妥当性を有することが示された.また,痛みそのものの軽減を図るだけでなく,感情状態を改善することで,痛み左有するがん患者の活動制限を改善できる可能性があること,及び,PPT Battery日本語版による評価を行う際は,歩行状態を考慮に入れる必要があることが示唆されだ.
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