研究概要 |
SARTストレス動物は全身的にはVagotonia型(副交感神経緊張亢進型)の自律神経失調状態にあること(Jpn J Psychosom Med. 1983 ; 23 : 61-68)が知られている。また, この動物は持続的な低血圧状態(Jpn J Pharmacol. 2001 ; 85 : 313-321)にあり, 高度な起立性低血圧(Jpn J Psychosom Med. 2005 ; 45 : 697-706)を示す。起立性低血圧には有用なかっ簡便なモデル動物がないことから, ストレスと低血圧, さらにはストレスと起立性低血圧の関係やそのメカニズム解明並びに治療薬開発の糸口になることが考えられる。そこでH20年度はこのモデル動物を用いてこれらのメカニズムを検討する一端として, SARTストレスラットにHead-Up tilt試験を適用し, この試験時の血圧及び心拍数を経時的に測定し, 既存の起立性低血圧治療薬である選択的α_1受容体刺激薬の効果及び体位性頻脈症候群治療薬であるピリドスチグミンの効果を検討した。 選択的α_1受容体刺激薬では立位による血圧低下を軽減し, その低下からの回復である血圧上昇の程度を上昇させ, 立位による徐脈を抑制し, SARTストレスによる起立性低血圧を軽減させた。また, ピリドスチグミンにも同様の傾向が認められた。現在臨床で使用されている起立性低血圧の治療薬の一つ選択的α_1受容体刺激薬により改善効果が認められたことから, SARTストレスラットは起立性低血圧のモデルとしての一面をより確かなものとし, この面における研究に有用なツールになり得ると考えられる。
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