まずin vitroの実験系で、胃癌及び大腸癌培養細胞の中から過去の卵巣癌細胞の報告で白金系抗癌剤薬剤感受性との関係があるとされた銅イオンくみ出しポンプのATP7A、ATP7B、およびくみ入れポンプのhCTR1を過剰発現している細胞をrealtime-RT-PCR法にて選択し、培地にオキサリプラチンおよびシスプラチンを添加し薬剤感受性を観察する至適濃度および至適薬剤暴露時間を決定した。次にsiRNAを導入してposttranscriptionalに分解して遺伝子をノックダウンする段階まで進んだが、realtime-RT-PCR法で確認したところmRNA発現抑制が不十分であった。条件を変えて検討したが、満足のいく結果が現在のところ得られていない。 胃癌および大腸癌の患者からの組織標本は、患者のエントリーが予想に反して進まず、解析は来年度に持ち越しとなった。正常組織からDNAおよびRNAを抽出してチル化や点突然変異の有無およびmRNA発現を定量する実験系では、様々な条件を検討の上、メチル化キットを用いたbisulfite genomic sequencingの実験系を確立した。 今年度は患者のエントリーを昨年以上に強力に推進し、統計的に十分な症例数を確保する。またsiRNAのプローブを数種類試用して、効率の良い遺伝子発現の抑制を実現し、次の段階につなげてく予定である。本研究は、薬効予測により無駄な抗がん剤を使用しないための「テーラーメイド医療」の基礎的な足がかりであるため、将来的には医療費の費用対効果の改善に寄与すると考えている。
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