研究概要 |
我々は当該研究において、初代肝幹細胞を分離・培養し、これに対して目的分子の発現を修飾することで肝幹/前駆細胞の増殖制御に関わる分子機構について解明を試み、さらに、その結果得られた知見をもとに、肝幹/前駆細胞の増殖活性を亢進・制御した細胞を肝障害マウスに移植し、致死的肝不全を治療しうる動物モデルの構築を目指す研究を行い、今年度の成果として下記を得た。 (1). マウス肝前駆細胞・肝幹細胞の分離、培養とウイルスベクターによる遺伝子導入/siRNA系を用いた目的遺伝子の肝幹細胞増殖に対する機能のスクリーニング : マウス胎仔肝臓から高速セルソーターを用いて、初代肝幹/前駆細胞が高濃度に純化された画分を分取し、増殖もしくは肝細胞への分化を誘導する培養実験系を既に確立していた。肝幹/前駆細胞に対して、分化・増殖に関与することを我々が予想している遺伝子の強制発現およびノックダウンをレトロウイルス・レンチウイルスベクターによって行った。その結果、転写因子Prox-1はLr-h-1と協調的に機能し肝幹/前駆細胞の増殖を正に調節していることを示した(Hepatology, 2008)。さらに転写因子Sall4は肝幹/前駆細胞の胆管への分化を正に誘導することを示した(Gastroenterology, 2009) (2). 肝幹細胞を用いた細胞移植系の開発と移植後の細胞動態の解析 : 研究代表者は成体由来肝細胞を用いて、高度の肝キメリズムが得られる移植系を独自に確立した。高脂血症を呈するApoE欠損マウスに対して野生型肝細胞を移植したところ、高脂血症が治癒し、移植した細胞がレシピエント肝で1年以上にわたって肝細胞として機能することを示した(第12回日本肝臓学会大会にて発表)。本移植系を用いて、増殖誘導効果を有する標的分子を強制発現及びknock downした肝幹/前駆細胞を移植し、そのドナーキメリズム・増殖性・終末分化に関して検証しており、次年度も継続して行う予定である。
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