研究概要 |
(1)サイクロフィリンを標的とした抗ウイルス療法の確立 HCV増殖に関連する宿主蛋白(サイクロフィリン)および相互作用するウイルス蛋白・エピトープを同定するためにTwo Hybrid法による網羅的探索を行った。HCV蛋白とサイクロフィリンA,BおよびCの相互作用の確認では、いずれの組み合わせでもシグナルは検出されず、HCV蛋白とサイクロフィリンの直接会合は認めなかったが、ヒト肝臓cDNAライブラリーを対象にTwo Hybrid法による網羅的探索を行い宿主蛋白の網羅的スクリーニングを行ったところ、サイクロフィリンと会合する蛋白としてFumarylacetoacetate hydrolase(FAH)、Homo sapiens insulin-like growth factor binding protein 2(IGFBP)が同定され、siRNAによる発現抑制によりウイルス増殖を確認したところFAHによりHCVレプリコン増殖が抑制されることを確認した。 (2)分子シャペロンを標的とした抗ウイルス療法の確立 分子シャペロンの一つであるサイクロフィリンがHCV複製増殖に関与していることから、HCV粒子形成にサイクロフィリンおよび会合する蛋白が必須であり、今後HCV治療の標的となる可能性がある。上記のFAHおよびIGFBPにつき引き続き検討予定である。 (3)HCV感染増殖に関連する宿主因子、および抗ウイルス薬剤・化合物・ペプチドの網羅的スクリーニング 我々が独自に開発したHCV増殖モデル、及びHCV-JFH1感染細胞を用い、抗ウイルス活性を持つ化合物・宿主蛋白などの探索、機能解析を遂行し、以下の結果を得た。 (1)8,000種の合成化合物のスクリーニングにより、HCV増殖を抑制する41種の化合物が同定され、IC50の優れた5個のepoxide誘導体を同定し、現在解析を進行中。 (2)HCV複製増殖に関与する代謝・シグナルネットワークの網羅的解析により、脂質・コレステロール代謝に関わる代謝・シグナルネットワークの関与、関連薬剤の効果を確認、脂質代謝がHCV複製増殖に与える影響および今後新規治療の標的となりうるか引き続き検討中。
|