研究概要 |
20年度は, インスリン抵抗性(IR)を伴うNAFLD・NASHモデル動物(高脂肪食負荷マウスやIRを伴う実験NASHモデルなど)や申請者らの教室が蓄えてきた肥満症・2型糖尿病・NAFLD患者の肝生検サンプルや臨床情報などを用い, 経時的に, 肝病理像(スコア化), 免疫組織化学染色, 分子マーカー, 個体としてのIR, 酸化ストレスマーカーなどを検討し, 肝臓の脂肪化が炎症とIRを形成する分子学的機序の解明をおこなった.また, それら肝臓に発現する遺伝子変化をDNA chipを用いて包括的に解析した. その結果, 私は, IRを形成する分子学的機序の候補の1つとして, あるタンパク分解系の障害を見出した.そこで, そのタンパク分解系が障害されているノックアウトマウスを使い, 経時的に, 肝病理像(スコア化), 分子マーカー, 個体としてのIR(糖・インスリン負荷試験), 酸化ストレスマーカーなどを検討した.20年度は, そのノックアウトマウスが, 糖負荷試験などにより,個体としての有意にIRが存在していることが証明できた.ただし, まだ, どのようなパスウェイを介して, 炎症やIRを引き起こすかを明らかになっておらず, 現在, この新しいモデル動物の肝臓, 脂肪, 骨格筋における蛋白レベルの解析を行っている.それにより, 炎症やIR発症機序の上流径路を同定し, 肝臓病としてのNAFLD/NASH, IRや肝脂肪化が増悪因子であるC型肝炎, 及びIRに関連した全身病態としてのメタボリックシンドロームや2型糖尿病の病態解明や新たな治療法開発に貢献する.
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