研究概要 |
20年度は,インスリン抵抗性を伴うNAFLD・NASHモデル動物や申請者らの教室が蓄えてきた肥満症・2型糖尿病・NAFLD患者の肝生検サンプルや臨床情報などを用い,肝臓の脂肪化が炎症とインスリン抵抗性を形成する分子学的機序の解明をおこなった. その結果,私は,肝臓の脂肪化がインスリン抵抗性を形成する分子学的機序の候補の1つとして,プロテアソーム機能障害を見出した.そこで,まず高脂肪食負荷マウス、肥満糖尿病モデルdb/dbマウスの肝臓でのプロテアソーム活性を調べたところ、コントロールマウスに比べ各々約60%低下していた。そこでさらに,プロテアソーム機能障害されているノックアウトマウスと野生型マウスを使い,経時的に,肝病理像(電子顕微鏡),分子マーカー,個体としてのインスリン抵抗性(糖負荷試験),酸化ストレスマーカー,小胞体ストレスなどを検討した. 肥満状態では、肝臓のプロテアソーム機能障害が生じ、代償的にユビキチン・プロテアソーム系を構成する遺伝子群が協調的に亢進することが分かった.また,プロテアソーム機能障害は,肝臓での小胞体ストレスとインスリン抵抗性を引き起ことを証明した. インスリン抵抗性を誘導する分子学的機序の1つであるプロテアソーム機能障害を解明することにより,肝臓病としてのNAFLD/NASH,インスリン抵抗性や肝脂肪化が増悪因子であるC型肝炎,及びインスリン抵抗性に関連した全身病態としてのメタボリックシンドロームや2型糖尿病の病態解明や新たな治療法開発に貢献する.
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