研究概要 |
EGCG((-)-epigallocatechir-3-gallate)は、様々な癌における受容体型チロシンキナーゼ(RTK)の異常活性を抑制することが報告されているが、詳細なメカニズムは分かっていない。今までに我々は、EGCGが細胞膜脂質ラフト(lipidrafts)の形成を阻害することを見出している(Adachi S et al, Cancer Res 2007)。脂質ラフトはさまざまな膜タンパクと密接に関わっているので、ラフトがEGCGの標的であると考えている。またEGCGによりEGFRは細胞膜から細胞質内にinternalization(内在化)し、チロシンの活性化を伴わず脱感作されることを報告した(Adachi S et al., Carcinogenesis 2008)。我々はこのEGFRの脱感作を導き、かつ「安価で容易に入手可能な薬剤」の開発をさらなる目的としてそのメカニズムの解析を行った。 研究実施計画に記載した本年度の課題である「大腸癌細胞担癌モデルにおけるEGCGの各種受容体型チロシンキナーゼの局在の変化(internalization)と活性化阻害作用、および大腸癌増殖抑制効果の検討」については現在進行中であるが、これと並行してin vitroの解析を行い、EGCGをはじめとした各種薬物がEGFRの脱感作を引き起こすメカニズムの解析を行い、p38MAPKを介した1046/1047番目のEGFRのセリン残基のリン酸化の誘導がEGFRの脱感作を起こすことを報告した。(Adachi S et al, Carcinogenesis 2009, Adachi S et al, Cancer Lett 2009, Adachi S et al, Oncol Rep2010) これらの研究結果から得られたEGFRの1046/1047番目のセリン残基のリン酸化によるdownregulationの詳細なメカニズムの解明により、今後このセリンのリン酸化を新たな分子標的とした薬物の開発が期待されると思われる。
|