Helichobacter pyloriはヒトの胃内に特異的に生息するグラム陰性桿菌である。全世界総人口の約半数に感染が認められ、胃・十二指腸潰瘍、胃がん、慢性胃炎、胃MALTリンパ腫などさまざまな疾患に関与していることがこれまでの研究により明らかにされている。H. pylor感染症に対しては、除菌療法が推奨されているが、日本の人口においては、約半数がH. pylori陽性であるため、抗生物質による多剤抗菌薬治療は耐性菌の出現などの点からも好ましくない。このことより、H. pyloriの胃粘膜免疫応答を正しく理解し病態を把握することが、将来の免疫療法、発がん制御法の開発にとって重要であると考える。そこで本年度は、H. pylori感染により胃がんを発症するヒトガストリントランスジェニックマウス(INS-GASマウス)を用いて、H. pylori染にて誘導される炎症から発がんの過程における宿主因子の役割を免疫学的見地から検討した。野生型マウス、およびINS-GASマウスにH. pylori(SS1株)を感染させ、経時的に組織学的検討を行ったところ、INS-GASマウスにおいて粘膜の過形成が確認された。感染6ヶ月まで経過観察したが、胃における発がんは認められなかった。本実験においては胃発がんが認められることが重要であるため、現在、より強い胃粘膜炎症を引き起こすことが知られているH. felisをINS-GASマウス感染させ、経時的に組織学的検討を行っている。
|