Helicobacter pylori (H.pylori)にて誘導される胃発癌に、宿主CD4陽性T細胞が関与しているかどうかを明らかすることである。H.pylori感染8ヶ月後のINS-GASマウスでは80%に胃粘膜炎症を認めたが、粘膜内癌や浸潤癌を確認できなかった。胃粘膜浸潤リンパ球は、これまでヒトH.pylori慢性胃炎患者からの生検材料から得たものと同様、約40%がT細胞で、その約半分がCD4陽性T細胞であった。胃粘膜組織を用いたReal time PCRによるサイトカインの検討では、IFN-γが高産生されており、また、H.pylori特異的血清IgG抗体の多くはIgG2a型であった。INS-GAS/IL-4欠損マウス、INS-GAS/IFN-γ欠損マウスを交配により作成した。INS-GAS/IL-4欠損マウスではそのコントロールと比較して、感染8カ月の時点で、胃粘膜の炎症は高度であった。 本研究により宿主の産生するIFN-γを中心としたTh1型の免疫応答が、胃粘膜炎症に重要な役割を持つ知見が得られうつある。H.pyloriの胃粘膜免疫応答を正しく理解し病態を把握する事が、将来の免疫療法、発癌制御法の開発にとって重要であり、本研究で得られた知見が、より有効な新規治療法の開発につながることが期待される。
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