本研究は、炎症性腸疾患とくに潰瘍性大腸炎におけるサイトメガロウイルス(CMV)感染による炎症増悪のメカニズムを解明し、Toll-like receptor(TLR)を中心とした自然免疫と炎症性腸疾患の発症との関係について明らかにすることを目的とする。ヒトCMVにより誘導されるTLRシグナルと免疫応答に関しては、リガンドは不明であるがTLR2を介する炎症性サイトカインの誘導が報告されている。しかし、dsDNAウイルスであるため、マウスCMVのようにTLR9を介するウイルス感染認識が存在することが予測され、この認識機構の有無についてまずTLRの発現する樹状細胞(DC)を用いたCMV感染実験で明らかにする。 <方法>(1)正常人の末梢血を50ml採取する。(2)比重遠心法にてリンパ球を分離した。(3)GM-CSFおよびIL-4を加えて7日間培養する。(4)細胞数をカウントし、CD11cおよびHLA-DRで細胞を標識しフローサイトメトリーでDCの精度を確認する。 <結果>末梢血50mlから作製できたDCは約1.0×10^6個と非常に少なかったが、精度は97%以上であった。この少ない細胞を用いてのCMV感染実験では、ELISAやPCR、Westem blottingといった多くの実験を行うことは困難で、ましてや貧血傾向のある患者からの50ml以上の採血は難しいため、大腸粘膜におけるCMV感染の測定をPCRで行うなど、他の手法を検討中である。 次に、CMV感染の腸炎に対する影響を検討するために、マウス腸炎モデルを用いた実験を行った。マウスの腸炎モデルとしてDextran Sulfate Sodium(DSS)腸炎を用い、腸炎の評価はDSS自由飲水開始後7日目にDisease Activity Index(DAI)およびMyeloperoxidase(MPO)assayを用いて行った。(5)CMV感受性マウスのBALB/cと耐性マウスのC57BL/6を用いてDSS腸炎を誘導し、day2にマウスCMVを5×10^5pfUずつ腹腔内投与し感染させた。腸炎の程度は評価中である。
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