研究概要 |
本研究においてはウイルスを認識するTLRと炎症性腸疾患の関係について検討した。サイトメガロウイルスに関しては、ヒトとマウスで異なるためマウスを用いた研究にて直接の証明が困難であった。経過中、抗ウイルス役やssRNAを認識するTLR7リガンドのイミキモド(IMQ)に腸炎抑制を認めたため、さらに検討を進めた。マウス実験腸炎として、T細胞の関与するTNBS(2,4,6-trinitrobenzene sulfonic acid)腸炎を用いた.1、マウスへTNBSを注腸し10μgのIMQを連日腹腔内投与したところ、腸炎抑制効果が認められ、また大腸における遺伝子発現ではTNF-αの発現が低下し、IFN-β、TGF-βの発現が増加していた。2、IMQ投与マウスの脾臓、および腹腔リンパ節における遺伝子発現とサイトカイン産生を検討した。脾臓では非投与群と比し有意差を認めず、腹腔リンパ節ではIMQ投与群においてTLR7、IFN-β、TGF-β、FOXP3の発現が増加していた。腹腔リンパ節を抗CD3/CD28抗体で刺激したところ、IMQ投与群でIL-10の産生増加が認められた。3、マウスの骨髄細胞からFlt3リガンドでpDCを誘導し、マウスの脾臓から分離したCD4^+T細胞と共培養した。培養上清において、LPSおよびCpG-DNA刺激群ではIFN-γとTNF-αの産生が増加していたが、IMQ投与群ではIL-10およびTGF-βの産生が増加していた。また培養細胞をフローサイトメトリーで検討し、IMQ投与群ではCD4^+CD25^+FOXP3^+のTregへの誘導が確認できた。 以上より、IMQ投与により腹腔リンパ節でTregが誘導され、TNBS腸炎が抑制されると考えられた。またIMQ刺激によりTLR7シグナル伝達が活性化し、pDCから産生されたI型IFNによりTregが誘導されると考えられた。IMQは既に臨床で使用されており、炎症性腸疾患の新たな治療薬の一つになることが期待される。
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