研究概要 |
「クローン病のマクロファージは脂質に過剰応答する」という仮説の元、各種実験を遂行した。まずクローン病患者および健常者からマクロファージを単離した。炎症を惹起すると考えられているオレイン酸、リノール酸、炎症抑制に働くと考えられているリノレイン酸、トランス脂肪酸であるエライディン酸でマクロファージを刺激した。培養上清中に分泌されたTNFα、IL-23、IL,-10等のサイトカイン測定を行った。オレイン酸、リノール酸の刺激によりいずれのサイトカイン産生も亢進していた。リノレイン酸、エライディン酸ではサイトカイン産生は検出感度以下であった。クローン病患者と健常人で脂質に対する応答性が異なるのは培養しているマクロファージの分化状態が違うのではないかと考え、分化マーカーや活性化マーカーを測定した。CD14、CD80、CD86等には差は見出されなかった。近年着目されている抑制型マクロファージの分化マーカーであるCD163の発現が活動性のクローン病患者で低値であり、血球をクローン病患者の血清で培養したところ著明に低下していた。CD163は切断され血漿および血清中で測定できることからEHSA法にて測定したところクローン病で可溶性CD163は亢進しており、活動性に相関していた。これらの結果からクローン病患者では血清中の炎症性サイトカイン等が異なるため、単球・マクロファージの分化がより炎症を惹起する方向に分化しており、脂質に対しても炎症性サイトカインを分泌しやすいのではないかと考えられた。また可溶性CD163の測定はクローン病患者の活動性の評価に有用である可能性が考えられた。
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