研究課題
機能性ディスペプシアの病態には多因子が関与する。我々は以前臨床研究において胃排出遅延を呈する食後愁訴症候群患者で、血漿グレリン濃度が上昇することを報告した(Aliment. Phamacol. Ther. 24(S4) : 104-110, 2006)。摂食、胃運動を調節するグレリンは重要なペプチドホルモンであるが、機能性ディスペプシアの病態とグレリンの関与についての詳細はいまだ不明である。そこで、胃排出障害ラットモデルにおいて、グレリン動態、胃排出動態、c-kit陽性細胞やコリン作働性神経を検討した。まず、ラットを用いた胃排出障害モデルを作成し、その有用性を確認した。本モデルラットでは空腹時のグレリン分泌が上昇する一方で、グレリン受容体であるGHS受容体のmRNA発現が上昇することがわかった。われわれはこの機構を解明するためにGHS受容体の発現を制御するプロモーターにおけるメチル化を検討したが、あきらかなメチル化の関与は証明できなかった。グレリンに対する抵抗性が上昇したことが示唆され、本知見は米国消化器病学会週間にて発表した(DDW2009、サンディエゴ)。さらにわれわれは同モデルにおけるグレリン動態と神経、筋の関係を検討した。その結果、RIA法にてグレリン発現、分泌が上昇することを示した。また、コリン作動性神経の神経蛋白であるChATおよびカハールの介在細胞のシグナルであるSCF、c-kitの活性化が認められた。本知見は研究会においても発表し、優秀賞を得た(第1回Japan Functional Dyspepsia research society 2009、東京)。
すべて 2009 2008
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件)
J Gastroenterol Hepatol S2
ページ: 16-21
消化管運動-目にみえない消化器疾患を追う 10
ページ: 24-26