(1)光線力学を応用した胃癌のセンチネルリンパ節同定 蛍光標識した癌特異的モノクローナル抗体FITC-SF25MAbの全身投与、ならびに蛍光物質ATX-S10の腫瘍内注射により、ラットのヒト胃癌モデルにおいて、胃癌のセンチネルリンパ節をリアルタイムに同定することができた。また、同リンパ節に転移がある例ではモノクローナル抗体の蛍光を確認できた。以上より、光線力学を応用することで、ヒト胃癌におけるセンチネルリンパ節の転移診断がリアルタイムに行うことが出来る可能性が示唆された。 (2)膵臓癌細胞株と樹状細胞との融合細胞による抗腫瘍免疫の誘導 樹状細胞を用いた膵臓癌ワクチン療法の開発を目的として、下記の実験結果を得た。 (a)ヒト膵臓癌細胞株Panc-1(HLA-A2+)と樹状細胞(HLA-A2)をポリエチレングリコール(PEG)で細胞融合し、癌ワクチンを作成した。 (b)融合細胞はMUC1やWTIなどの腫瘍抗原やMHC class Iや11さらに共刺激分子(CD80やCD86)などを発現していた。 (c)この融合細胞にて自己T細胞を刺激するとCD4とCD8T細胞を共に刺激することが可能であった。 (d)刺激されたCD4とCD8T細胞からは高いインターフェロンガンマの産生をみとめた。 (e)誘導された細胞傷害性T細胞は膵臓癌細胞に対して高い殺傷能力を有していた。 融合細胞ワクチンの癌逃避機構の解明 (a)癌細胞分泌物質により未熟な状態の樹状細胞を用いて作成した融合細胞ワクチンは共刺激分子であるCD80やCD86の発現が低下し、抗原定時能が低下していた。 (b)癌細胞分泌物質に暴露された融合細胞ワクチンはCD4とCD8T細胞を共に刺激することが困難であった。 (c)誘導した細胞傷害性T細胞はインターフェロンガンマの産生能が低下しており、癌細胞に対して殺傷能力が著しく低下していた。 (d)癌ワクチンによる治療効果を上げるには担癌患者の免疫抑制状態を改善させる必要があると考えられた。
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