本研究の目的はプロテオミクス的解析法を用いた心血管リモデリング機構の解明および治療法の開発である。リサーチプロテオミクスを導入し、我々が過去に同定した心血管リモデリングに重要な役割を有す転写因子KLF5を中心に、心血管病の病態形成に関わる遺伝子およびこれらのコ・ファクターの包括的な単離、発現抑制系による機能解析を行う。最終的には、KLF5をモデルとした核内転写因子ネットワークによる転写調節機構を解明し、臓器リモデリングの予防及び治療法を開発することを目標とする。 PDGF-Aは平滑筋細胞の遊走・増殖を促進し、動脈硬化症の発症に重要な役割を果たす増殖因子であるが、我々の過去の検討によりKLF5の標的遺伝子であり、-71~-55bp領域が心血管リモデリングにおいて重要であることが判明した。本研究における具体的な計画として、まずPDGF-A遺伝子-71~-55bp領域に結合するタンパクを同定する。基本的にはKLF5結合タンパクのスクリーニングに準ずる。具体的にはPDGF-AプロモータのKLF5結合サイトである-71~-55bp領域の二本鎖DNAを合成し、その一端をビオチン化した。ストレプトアビジンとビオチンの強固な結合を利用し、メタルビーズ表面に固定した。これに細胞の核抽出液を反応させ、pull downした。その後、SDS-PAGE展開し、特異的バンドをゲル内トリプシン消化法にて同定した。いくつかの興味深い因子が同定された。KLF5結合因子の生化学的特徴をもとに、細胞から動物レベルにおける病態メカニズムを追求した。なかでも、酸化ストレスからの心血管組織の防御機構における新規メカニズムが明らかになった。
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