ApoEKO、ApoE/AT_1 double KO、ApoE/AT_2 double KOマウスの総頸動脈分岐部直下を結紮し、4週後に結紮した総頸動脈の近位部に内径0.58mm、長さ2mmのポリエチレンカフを留置することで動脈硬化プラーク破綻モデルを作製した。組織学的検討の結果、ApoEKOマウスでは約50%にプラーク破綻が確認されたが、興味深いことにApoE/AT_1 double KOマウスにおけるプラーク破綻率は約15%と、ApoE KOマウスに比べその頻度は有意に低下していた。現在のところ、ApoE KOマウスとApoE/AT_2 dodble KOマウスのプラーク破綻率に有意な差は認められていない。また、マウス腹腔マクロファージを用いたin vitro研究の結果、LPS刺激によるLOX-1、TNF-α、MMP-2、MMP-13 mRNAの発現が、ApoE Kマウスに比べApoE/AT_1 double KOで有意に低下していることが確認された。これらの結果は、AT_1受容体がマクロファージの酸化LDL受容体、炎症性サイトカイン、MMPの発現を介してプラークの不安定化にはたらいている可能性を示唆している。平成21年度は、既に採取・凍結保存しているプラーク組織における炎症性細胞浸潤、スカベンジャー受容体、炎症性サイトカイン、MMPなどのmRNA発現、蛋白発現を免疫組識染色、Real Time PCR、Western blotによって解析し、AP_1受容体の関与を検討していく予定である。さらに、マウス腹腔マクロファージを用いて、AT_1受容体がマクロファージの遊走能や貪食能に与える影響についても検討する。これらの研究により、プラーク破綻におけるマクロファージ機能やレニン-アンジオテンシン系の役割が明らかとなり、プラーク破綻機構の解明や動脈硬化の治療戦略を確立する上で大きな意義を持つものと期待される。
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