研究概要 |
肥大型心筋症における遺伝型と表現型(臨床病型)の関連性を検討するにあたり、平成21年度は遺伝子スクリーニングを施行した。肥大型心筋症例約200家系の遺伝子解析を行い、合計23家系から50例の同一遺伝子変異(心筋ミオシン結合蛋白C遺伝子変異(V593fs))陽性者が同定された。変異陽性者を対象にハプロタイプ解析を施行し、家系の関連性、さらには病態修飾因子の同定を行っている。また、新たな遺伝子変異として心筋ミオシン結合蛋白C遺伝子のナンセンス変異(S297X)について論文発表を行った(Hirota T, Kubo T, Kiaoka H, et al. J Cardiol 2010 ; in press)。 表現型の評価では、左室心筋リモデリング・心筋傷害の点からいくつかの研究を行った。リモデリングの最終像である拡張相肥大型心筋症と、同様に左室収縮不全を来たす拡張型心筋症について、その臨床像の比較を行い、拡張相肥大型心筋症でははるかに予後が不良であることなどを報告した(Hamada T, et al. Clin Cardiol 2010 ; in press)。また、肥大型心筋症における心筋傷害の評価として血清心筋トロポニンI値について検討し、左室最大壁厚との関連性が強く、心筋傷害・左室リモデリングのメカニズム解明のキーとなるマーカーである可能性について論文報告を行った(Kubo T, et al. Clin Cardiol 2010 ; 33 : El-7.)。さらに、高知県内の基幹病院を中心に心筋症ネットワークを構築し、本ネットワークに登録された肥大型心筋症261例の登録時の臨床情報を解析し論文発表を行った(中年~高齢患者においては心房細動の出現が臨床経過の重要な起点となっている。(Kubo T, et al. Circ J 2009 ; 73:1599-605.))
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