研究概要 |
肥大型心筋症における遺伝型と表現型(臨床病型)の関連性を検討するにあたり、病因遺伝子解析を引き続き行った。 表現型の評価では、肥大型心筋症における心筋傷害の評価として血清心筋トロポニンI値について検討し、心室負荷の状態を表す脳性ナトリウム利尿ペプチド値と組み合わせることで、本症の心血管イベントの予測に有用であることを報告した。すなわち、両者いずれのバイオマーカーが高値の群では、いずれも低値の群と比較して、心血管イベントの発症が11.7倍高率に起こることを示した(Kubo T,et al.Circ J2010;75:919-26.)。また、左室リモデリングの最終像である拡張相肥大型心筋症と、同様に左室収縮不全を来たす拡張型心筋症について、その臨床像の比較を行い、拡張相肥大型心筋症でははるかに予後が不良であることなどを報告した(Hamada T,et al.Clin Cardio1 2010;33:E24-E28)。 さらに、これまでに得られた遺伝型と表現型の情報をもとに、昨年度までに得られた合計23家系50例の同一遺伝子変異(心筋ミオシン結合蛋白C遺伝子変異(V593fs))陽性者を対象に病態修飾因子の同定を試みた。遺伝的要因について確定的な修飾因子は得られなかったが、家系ごとに臨床病型に類似点があることが分かった。また、肥大型心筋症の臨床像の差異をきたす要因の一つとして性差に注目し、女性患者では発症年齢がより高齢であり、さらに症状が重篤で、閉塞性肥大型心筋症が多い、などの知見を得た(Kubo T,et al,J Cardiol 2010;56:314-9,)。
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