1. 心不全時には副腎皮質からアルドステロンの分泌が亢進する。その機序はレニン、アンジオテンシン系を介したアルドステロン合成酵素であるCYP11B2の発現亢進が関与するとされている。コンピュータによるゲノム解析でそのCYP11B2をコード遺伝子する遺伝子調節領域に転写抑制エレメントNRSE配列が存在することを発見した。今年度は実際、そのエレメントに転写抑制因子NRSFが結合して通常状態ではアルドステロン分泌を抑制することに関与していることを世界で初めて証明した。さらにその転写抑制の解除にアルドステロンの強力な刺激因子であるアンジオテンシンIIやカリウム(K^+)が関与していることを証明した。種々の分子生物学的手法(Gel ShiftアッセイやChIPアッセイ、レポーター・プロモーターアッセイを用いて確認した。 2. 心不全時におけるT型カルシウム電流の増加は報告されているがその機序・意義は明らかではない。我々はT型カルシウムチャネルの一つCav3.2の心筋過剰発現マウスモデルを作製したが、Cav3.2の発現が少ない1系統が確保できただけである。以上からT型カルシウムチャネルの高発現のマウスでは胎生致死である可能性を考えた。したがって本年度はテトラサイクリン-OFF(tet-off)の誘導系過剰発現マウスの作製にとりかかり、出生後にマウス心筋でT型カルシウムチャネルCav3.2過剰発現モデルを作製した。現在、そのマウスの第1世代で実際飲水中のテトラサイクリンを除去することでT型カルシウムチャネルが過剰発現するかを、mRNAレベル、タンパクレベルで確認している。
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