研究概要 |
2007年度までに我々はIVIGの前投与により、(1)再潅流1時間後に有意に良好な再潅流が得られること(2)再潅流24時間後に梗塞サイズ縮小傾向が見られること(3)再潅流24時間後、14日後の血行動態評価で有意に良好な心機能を示すことなどを確認してきた。またリスクエリア心筋における炎症マーカーの解析では、IL-1β, IGAM-1mRNAの有意な発現低下, MCP-1, MIP-1α, iNOSの発現低下傾向を認めていた。これを踏まえ、2008年度は特に補体系、好中球浸潤といった、これまで他臓器の虚血再潅流モデルで関係が報告されている炎症反応の各段階におけるIVIGの効果を心筋で検討した。補体糸は中心的フラグメントであるC3の血漿中濃度、リスクエリア心筋の抽出液中の濃度をELISA法で測定し、リスクエリア内での局在と発現量を免疫染色法で検討した。血漿中C3濃度(コントロール群vs. IVIG群140.6vs. 97.4ng/ml, P=0.05)、心筋抽出液中C3濃度(コントロール群vs. IVIG群2.15vs. 1.08ng/ml, P=0.048)ともIVIG投与群で有意に低値を示した。免疫染色法でもIVIG群でC3の発現量は低値であった。好中球浸潤についてはミエロペルオキシダーゼによる免疫染色法を用いて検討上た。その結果、ミエロペルオキシダーゼ陽性細胞数は、コントロール群vs. IVIG群15.9vs. 8.0/HPE(P<0.001)とIVIG群で有意に低値を示した。この結果は、補体系の活性化、炎症性サイトカイン、接着因子の発現、好中球浸潤といった炎症反応が心筋虚血再潅流でも惹起されており、IVIGがこのプロセスを抑止することにより心筋虚血再潅流傷害を軽減する可能性を示唆するものである。
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