研究概要 |
我々は、ポリクローナル免疫グロブリンG(IVIG)が、虚血再潅流ストレスによるリスクエリア心筋での一連の炎症反応を調節し、再潅流傷害を軽減し、ひいては心筋梗塞後の左室リモデリング、生命予後を改善するのではないかという仮説のもとに、ラットの虚血再潅流モデルを用いて研究を重ねてきた。その結果、IVIGの前投与が、(1)再潅流1時間後のコントラストエコーでの微小循環障害を軽減すること、(2)再潅流24時間後の梗塞サイズを縮小させる傾向があること、(3)再潅流24時間後、14日後の血行動態、心機能を有意に改善することを確認した。またリスクエリア心筋を用いた各種検討では、(4)炎症性サイトカイン、ケモカイン、接着分子(IL-1β,ICAM-1,MCP-1,MIP-1α,iNOS mRNA)の有意な発現低下を認め、(5)心筋抽出液中の補体C3発現量の有意な低下、(5)免疫染色法でのC3発現量、ミエロペルオキシダーゼ陽性細胞浸潤の軽減を確認した。我々はこの結果を、2009年の欧州心臓病学会(ESC Congress 2009)で口頭発表した。 さらに、他臓器の虚血再潅流モデルにおいても示されるように、虚血再潅流傷害における補体系の役割は大きく、IVIGがどの段階でどのような形で補体系と関与し活性化に抑止的な役割を演じるのか検討を行っているが、いまだに結論には至っていない。今後もIVIGの心筋虚血再潅流傷害における効果、役割を補体系を中心にさらに詳細に検討していきたい。また、急性心筋梗塞症での実際の使用時期を鑑み、IVIGの虚血期間中または再潅流直後の投与の効果についても検討していきたいと考えている。
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