今回の研究では心臓支配副交感神経に関する分子メカニズムを解明することを目的とした。そのためにまず、心臓支配副交感神経を可視化することを目標とした。予備実験として、心臓支配副交感神経や心臓神経節がChAT(choline acetyl transfbrase)で染色可能であることを確認し、成獣マウスにおいてはChATが心内膜側に優位であることを確認した。ChATに特異的にCre recombinaseを発現するChAT-creマウスから、cre-loxPシステムによりChAT-EGFPマウスを樹立し、心臓副交感神経の可視化を行うことを目指した。しかし、このマウスは心臓副交感神経を特異的にトレースするものではなかった。現在、別の副交感神経のマーカーであるVAChT(vesicular acetyl choline transporter)を用いて同様の検討を行っている。また発生段階における心臓副交感神経に関して、IL-6関連サイトカインであるHFおよびIL-6関連サイトカインファミリーに共通の受容体gp130の関与を検討するためにLIFmRNA発現の心臓における経時的変化を定量的RT-PCR法にて解析し、副交感神経の発達とLIFの発現との間に相関があるか否かを調べている。心臓特異的LIF過剰発現マウス(LIFtg)とVAChT-EGFPを交配させ、胎生期心臓副交感神経支配確立にLIFが関与するかを調べ、またgp130の交感神経特異的ノックアウトマウス(DBH-gp130-/-)とVAChT-EGFPを交配させ、胎生期心臓副交感神経支配確立に交感神経の副交感神経化の関与の有無を検討しているところである。
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